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2024年8月8日
データ形式 ファイル形式

ときおり、ユーザーの皆様から頂くご要望の中に 普通のレイヤーをもっとたくさん使いたい 色数をもっとたくさん使いたい というご要望を頂くことがあります。私たち開発チーム内部でもその要望は持っており、いろいろと検討を重ねています。

実際のところ1Bitpencilでそれが実現できるかというと難しいかなという部分と、あるいは条件付きで実現できるかもしれないという部分があります。

実現できるかもしれないのは、8枚のレイヤーで、各レイヤー1色ずつの形式を採用するというところで、難しいのはフルカラー対応と上限の無いレイヤーを持つ形式の採用です。

1BitPencilはその名の通り、基本的には1Bitのモノクロ画像を扱うところに全力を使う仕様にしています。これは、アナログの鉛筆の持つ高精細さをデジタルに置き換えて表現することに適していると判断したことと、現代の印刷技術の基礎が白のトナーを持たない形式であるところにも寄ります、つまり、1bitpencilの超高解像度は印刷機の最大解像度を出し切ることも視野に入れた仕様になっているわけです。

私たちはデジタルにおいて、データのクオリティを支える技術は多々ありますが、この高密度でモノクロで二値であることは、かなり純粋なデータであると考えています。それはつまり、ユーザーの編集、操作に対して、自動的な補完による色や余分なデータが発生せず、人間の運動と、それを受けとめるハードウェアのセンサーの限界を引き出してその軌道や軌跡を残すということになります。

もちろん、考え方は様々であって良いものです。フルカラーで無限にレイヤーが使える形式の重層的なアートワークの素晴らしさに対し、私たち開発チームも憧れは持っているのも事実なのですが、現在の1BitPencilでは最も先鋭的な表現を実現していくことがテーマになっています。そのために要素を絞っていった結果、モノクロ二値というデータ形式を採用し、それに適したPNGの単ファイルがフォーマットになりました。

おそらく、ユーザーの皆様にはご不便を強いている面もあるとは思いますが、軽量なデータの取り回しの良さ、継続して使用できる安心感、複数の環境からのアクセス性の良さ、などアナログのクロッキーやエスキース帳、また測量野帳やメモ帳のような手軽さなど、この形式にも数多くのメリットがあります。

アプリケーションを使って頂いてるうちに、何かしら適材適所が見つかり、特性の一つ一つを楽しんで頂けるのではないかと考えています。



2024年7月6日
鉛筆の質感  アナログについて

1Bitpencilは、その名前にもあるように鉛筆の表現に力を入れています。
開発リーダーであるminordaimyo氏は wasmを利用したWebアプリケーションで「えんぴつチャット」を開発していました。
(さらに以前にWindowsで1bitpaint 、8bitpaint、wasmで8bitpaintWebというアプリケーションを開発していましたが、その話は別の機会にします)

「えんぴつチャット」 では鉛筆の質感、粒状感を活かすために色数を256色にし独自のパレットを作成し、大きなキャンバスと使いやすい機能で好評を頂きました。現在も稼働中なので、もしよければお試しください。
基本的には、Webブラウザとwacomタブレットの環境で動作しますが、一般的なアンドロイドタブ、スマホなどでも動かせると思います。

えんぴつチャット

Qiitaより  解説
Undo/Redoが出来るお絵描きチャット"えんぴつチャット"をWasmで作った

このように、もともとデジタルで鉛筆の質感を再現することに興味があったわけなのですが、根本的な部分にアナログの高解像度への憧憬のようなものがあると考えています。
普段、あまり意識しませんが鉛筆の粒子は実に細かいものです。
種類にも寄ってしまいますが鉛筆に使用される黒鉛のサイズは10μm(ミクロン)ほどと考えられます。
mmで言うとこれは、0.01mmほどです。今iPadのRetinaディスプレイが、ざっくりで300ppiほどなので1㎜に換算すると12ピクセルくらい、1ピクセルのサイズにすると0.08㎜くらいですね。
ものすごく雑な計算ではありますが、アナログの鉛筆と、iPadのディスプレイの間にはまだ8倍ほどの差があります。
開発開始前のことですが、このような話が開発チーム内では良くされていました。

当時の私たちは、よりハイスペックな事柄に挑戦したいと考えていましたので、iPadとApplePencilは常に話題に上がっていました。
なんとか、新しいiPad用アプリを開発したい。おもいきり個性的でなおかつ実用的なシンプルなものを。
そんな時に、前述のアナログとの比較が引っ掛かりました。
「確かにアナログとの差がまだそんなにあるのは残念だけれども10倍圏内にあるのは寧ろ希望が持てるのではないか」
たしか、そんな流れの話になり、テストが開始されました。
実は、この前段階で8bitベース、アンチエイリアスありのフォーマットで鉛筆の再現をコンセプトにしたwebアプリ(8bitpaintPencil)を開発していたということもあり、すぐにテストアプリは作成されました。
モノクロ2値の1bitのPNG形式、漫画用途以外では最近あまり見かけない形式で、懸案だったハードウェア側の縮小表示の品質に全く問題がなく、むしろその表示品質には期待が持てるものでした。

ここから開発は加速しました。それと同時に、アナログの鉛筆と紙に対する検証と考察も深めていきました。
主に、紙、印刷、鉛筆、などの現代のアナログ、マテリアルとしての持つ機能性を整理しアプリケーションに取り込めないかを検討していきました。
その中でも、初期の段階での成功例は鉛筆の硬度の再現でした。
アナログの鉛筆には硬度があり、黒鉛の含有量によってその濃度も変化します。通常フルカラー対応のイラストアプリケーションでは鉛筆も他のブラシと同様に、任意の色が割り当てられてその色の100%の濃度まで筆圧で変化させて描画されます。つまり「一般的な鉛筆」を再現する場合、それは、アナログの現実世界では「黒色の色鉛筆」に相応します。
1BitPencilでは、ドットの密度を調整することで、現実の鉛筆の見え方を再現しようと考えています。
もちろん現実の鉛筆は黒鉛と粘土、それに他の混合物も入っていて、紙に張り付いていく過程で剥離する形状は非常に複雑で細かくまだまだディスプレイで再現することは出来ません。
しかしながら、鉛筆の濃さや硬さをコントロールする濃く黒い黒鉛やカーボンなどの含有濃度をドットの密度に見立てて調整することは、現状のiPadでとても有効に機能すると私たちは判断し、そのアイデアを整理し1BitPencilのコア機能である「鉛筆」ブラシが誕生しました。出来上がった鉛筆の操作感や質感に私たちは喜びました。

振り返ってみるとこの過程で開発の方向性が出来上がっていたと思います。繰り返しアナログの質感との比較をするうちに、アナログの紙や筆記具、文房具に対する敬意が培われていました。
アナログの紙や筆記具で出来ている便利なこと楽しいことが、本当にデジタルで再現できているだろうか?
という疑問も生まれました。
このように書くと、アナログ至上主義のように捉えられてしまうかもしれませんが、そうではありませんので、ご理解頂けると助かります。
今のところ私たちはもう少し、デジタルとアナログの間にありそうな、シンプルで根本的なところを試行錯誤しています。
例えば、

鉛筆の質感にマッチした紙の種類をもっと増やせないか
どのブラシを選んでも使用者の使いやすい設定に自動で変化できないだろうか
アナログのように、紙に名前を付けなくてもわかりやすく管理できないだろうか
解像度のことを考えなくても最適な値で使えないだろうか
たくさんのレイヤーがないことを不便に感じさせない編集機能が作れないか
アナログの紙と筆記具が出来ていることを、似たような使用感で再現できているか


というようなことを考えています。
アナログの筆記用具というのは、実際は立体物なので本当に様々なことが出来ます。
絵を描いたり、字を描いたりもそうですが、その中でも文字と絵とコマ割りを使って漫画を描いたり、ページを使ってパラパラ漫画を描いたり、複数枚の紙とトレス台、タイムシートを使ってアニメーションを作ったり、本当に様々なことが可能です。

主に鉛筆の質感の追求から始まった1Bitpencilの開発ですが、今後も様々な用途で「アナログのように、ちゃんと機能する」ことを目指して開発を進めていきます。

今後ともどうぞよろしく。では、また!

2024年3月11日
開発チームから、ユーザーの皆様へ

このアプリケーションに気を留めて、購入して、さらにはここを訪ねてきてくれて、ありがとうございます。

私たち開発チームは、いろいろなことを乗り越えて このアプリケーションを皆様に使ってもらえることを心から喜んでいます。

ここには企画者が代表して開発チームが考えていることを書き残しておきます。
もちろん読まなくてもこのアプリケーションを楽しんで頂けることをお約束いたします。
内容は、およそ、下記のような技術的な事柄です。